「たしなむ」

「たしなむ」と言うやまと言葉は好きな言葉のひとつだが不思議な使われ方もするのだ。  「酒をたしなむ」は「好んで酒を親しむ」との意味となるのだが、「武道をたしなむ」となると好んで親しみながら「一定の心得、度量がある」との意味が含まれることになるのだ。 「紳士のたしなみ」は、「身だしなみ」との意味に使われるし、他動詞「たしなめる」として使えば「反省を促す事」の場合に使われる。 「お酒は召し上がりますか?」と尋ねられ「たしなむ程度です」と答えたとすると、酒は飲むがほどほど、そこそこに飲む、という意味になる。 つまり「たしなむ」という言葉には「好んで親しむ」という欲求の意味とある種のつつしみ、抑制のようなものが同居している言葉であり、使われ方によってはその両者のほど良い加減において使われているのだ。  「たしなむ」には無理、我慢して、といった、いやいやながらする刻苦勉励ではなく、「好みながら励む」という言葉の語感があるのだ。 だから長続きもするし、おのずと成長、上達もする。 「好きこそものの上手なれ」 この言葉に「たしなむ」という言葉を言い表しており、物事の本質を端的に表現している人生を楽しく過ごす極意のような気がする。

JO