剣菱
この名前を聞いても知らない人がいるかもしれない。 時代が変わっても昔から、男の酒はこれと決まっている。 それは灘の酒、「剣菱」である。 時が変わっても昔と同じお酒を造り続けてきたのだ。 戦後、米不足の時代でも初代の「変えるなかれ」との言葉を守って手に入る米で、造れる分しか造らなかったという。 それが、兵庫、灘の剣菱酒造なのだ。 室町時代から続く「剣菱」だが、じつは蔵元が今までに4度替わり、昭和3年に現在の白樫家が当主となった。 現在は4代目だが初代の家訓に「止まった時計でいること」の一文を今も守っている。 「一度狂った時計の針はそれでも回り続ける限り、本当の時間と重なることはない。 けれども、止まった針なら一日に2度は必ず合うやろ。」 世の流れに一喜一憂するのではなく、自分たちの内に基軸を持つ。 信じる味を守り続けていれば、たとえ周回遅れになっても時代と重なる時がくる、ということなのだ。 それでも、現在は職人も機材も伝統的なものが少なくなっている。 自社で職人を育成し、お酒を造る道具も社員が作る。 時代は変わるので「そのまま」では果たせない時代であり、難しいのだ。
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