桜餅

桜の匂い、それを記憶のなかから呼び戻そうとしてもなかなか出てこない。 そういえば毎年春になれば満開の桜の下を歩くけれど、ついぞ桜の匂いに気付いたことがないように思う。 桜のなかには「匂桜」と言われる種類があって、やさしく清楚な匂がするという。 江戸時代の駿河台あたりには「スルガダイニオイ」という匂桜が咲き乱れ大層いい匂がしたらしい。 「日本書記」に始めて桜が美の対象として登場して以来、桜の花の美しさとともにそれが放つ香しき匂はずっと日本人に愛され続けてきた。 ソメイヨシノという品種名にしてから人気となり全国で植樹されて広まった。 その後、匂桜に出会うことは少なくなってしまった。 それでも匂桜を知っているような気がする。 それは、なぜだろうと考えたところ桜餅のせいだろうと気が付いた。 塩漬けの葉っぱを噛んだとき鼻孔を抜けていくあの匂だと思う。 桜餅の葉っぱは「オオシマザクラ」。 この葉っぱには毛が無いのでツルツルしていて食べるのに都合がいい。 関東風の桜餅はこし餡を小麦粉をクレープ風に焼いた皮で巻く。 関西風はこし餡を蒸した道明寺粉で包む。 葉っぱは食べるか、残すかはお好み次第。 好きなようにパクリとやって春の匂を楽しめばよい。 ちなみに、匂桜が多くある近隣の場所は、高尾の「多摩森林科学園」、東京の荒川堤あたりに多くあるとの事。

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