萩原 朔太郎
皆様方との会話で、猫の話しが多々あり、猫好きが多いことを知った。 今回は少々、猫に関する話しをしよう。 ちなみに、吾輩は犬派である。
詩人・萩原朔太郎の詩集「月に吠える」、「青猫」を読んだことのある方は多いだろう。 しかし、朔太郎の書いた小節「猫町」を読んだことのある方は少ないのではないだろうか。 そして、この小説を題材に1979年に発行された「猫町の絵本」という本がある。 朔太郎による幻想話「猫町」と題されたその本は、絵本作家・片山健さんの絵が表紙に描かれており、中身には20ページに満たない謎に小説「猫町」全文が掲載され、さらに、赤瀬川源平、江戸川乱歩、種村季弘、海野弘ら十余名の作家らによる「猫町」に対する評論やエッセイが並び、その合間合間に鈴木康司、水木しげる、花輪利一、鈴木翁二らの個性的で魅力的なアーティストらによる「猫町」へのオマージュ作品で構成された、とても魅力的な「猫」の絵本だ。 短めの文章だが朔太郎の猫町の妖しげな世界と、まるで舞台をみているかのようなリアリティーのある文章に、ずるずると引き込まれてしまう。 作者が軽便鉄道に乗って北越地方を旅した時の事、山の中に突然現れたなんとも風靡で魅了的な街並みの町を見つけ思わずその駅に降りる。 なぜ今まで自分はこの街に気が付かなかったのだろうと見惚れていたその時、ザワザワザワッと激しい胸騒ぎがし何かが起こると覚悟した途端、一瞬にして辺りが一変し、そこにいた風靡な人達は、どこをみても猫、猫、猫、猫ばかりの猫町に一変するという話しだ。 現実世界に対する幻滅や失望と、理想的な美意識の世界への憧れの混じりあった想いの現れであったのではないかと感じる。
JO