長月

8月も終わり、9月になったら急に朝夕の空気が変わった事に気が付いた。 二十四節気の処暑を過ぎ、日中はまだ残る残暑も、朝夕にはおさまり、心地よい夕暮れに過ごすうちに夏は過ぎていく。 見上げると宵の空には三ケ月が、これから日を追って丸くなる。 今年の中秋の名月は9月13日になる。 こんな時、月の光でも自分の影がハッキリと道に映っているのが分かる。 太陽の光でできる影とは違って何かもの言いたげで、勝手に動き出しそう影の趣に何となく月や星々と近くなり秋は深まっていく。 東西南北に広がる日本では季節の差が一月ほどあるから、その土地によって採れる花も実りも千差万別、お供え物も様々になる。 お団子だって、里芋のかたちや、へそを作ったもの、餡子で包んだものなど色々なかたちがある。 ただ、やっぱり一番は子供の頃に母が作ってくれたかたちになる。 我が家の場合は白くて平たく丸い団子だった。 月と見比べて 「同じ丸だ」 と思った事を思い出す。 丸い団子は十五夜に限らず、お盆やお正月などの様々な行事に用いられる事から、これには月にまつわる日本の文化や行事、そして言葉などありとあらゆるものの中に織り込まれていると考えると先人が残した膨大な文化の記憶を大切に、この感覚を豊かに働かせることが幸せを感じる幅が今よりずっと広がるのではないだろうか。 そう思いながら寝床に着くと、夜風を少々入れようと窓を開くと、外からは心地良い冷気とともに秋の虫の鳴き声がリンリンと聞こえてくる。 もう秋はすぐそこに来ていた。

JO