カウントダウン

5!4!!3!!!今日最後のカウントダウンが始まった。利用者さん達は3時間やり続けた運動からようやく解放されることにホッとしている事だろう。遠くで志田さんが発する大きな声のカウントダウンが私の頭にこだまする。

38年前の夏休み、私はぼんやり霞んでいく意識の中でカウントダウンを叫んでいた。大学1年の時横浜から青森県竜飛岬まで自転車で関東東北縦断の旅に出た。その日は山形県東根温泉で1泊し新庄を目指し走っていた。ドロップハンドルの自転車は疲れてくると前を見るのもおっくうになる。30度を超える暑さのなか峠を登っていた。前を見るために頭を上げる体力も切れようとしていた。あと100回ペダルをこいだら前を見よう、そう思い心の中で100、99とカウントダウンを始めた。道路の左端を示す白線をトレースしながら走った。コンクリートがゆっくりと後ろに流れていく。吐く息の向こうに汗がぽたぽたと道路に落ちていくのが見える。その時、カウントがいくつだったか覚えていない。私は道路に駐車していた乗用車に追突し、頭からその車のリヤウインドウを突き破ってしまった。車のガラスってこんなに簡単に割れるものなのか。人間の頭って、こんな事故でも割れることはないんだ。私は脳天気な事を考えていた。田代