サン=デグジュペリ

この時節がら本を読む機会が今まで以上に多い。 「星の王子様」という本を御存知の方も多いと思う。 もし読んだことが無いのならば、ぜひ一度読んでみてはいかがだろうか。 この本は平仮名が多い文体なので児童向けと思われるかもしれないが、いろいろと考えらさせられる本の一つだと思うからだ。 1930年、フランスの航空会社のアルゼンチン支店長だったサン=デグジュペリはあるパーティーで美しい女性に出会った。 彼女の名前はコンスエロ・カリーニョ。 アルゼンチンの外交官であった人物の未亡人だった。 サン=デグジュペリはなかば強引とも言える申し出をした。 「そうだ、あなたは僕と一緒にこれから飛行機で日没を見に行くのです。」 その日、コンスエロはブエノスアイレスの空の上で、サン=デグジュペリから「なんて小さな手だ。 その手を永遠に僕に下さい。」と突然プロポーズされた。 彼女こそ、今も世界中で愛される傑作「星の王子様」に出てくるバラのモデルとなったといわれる女性だ。 翌年二人はフランスで暮らし始めた。 コンスエロの献身もあり、サン=デグジュペリは「夜間飛行」でベストセラー作家となり、多くの女性崇拝者と時を共にすることがあった。 一方、気性の激しいコンスエロは同居と別居を繰り返す事となった。 ところが、ナチスがフランスを占領したことが夫婦を再び結び付け、アメリカに亡命してニューヨーク郊外の海辺に住み着いた。 1942年の事だった。 その静かな環境の中で生まれたのが「星の王子様」だった。 作中で王子様はバラについて語る。 「花は無邪気に棘さえあれば無敵だちと思っている。」 「見え透いた企みの中に隠れた愛情に気付くべきだった。」 「花ははかない。 世界から身を守るために4本の棘しか持っていないのに、一人ぼっちで星に残してきてしまった。」 1943年、サン=デグジュペリは祖国フランスを守るために空軍のパイロットに志願し、北アフリカに旅立った。 その翌年、地中海の偵察飛行に出たまま消息を絶ってしまった。 (2003年、マルセイユ沖合の海底で搭乗機の残骸が発見された) コンスエロのもとには二度と戻ることはなかった。 物語の中でキツネが王子様に教えてくれた言葉、「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。 かんじんなことは、目に見えないんだよ」と。

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