タージマハル

6月5日の私のブログでタイのゴールデントライアングルを訪れた時のことを書いた。私がこのタージマハルに着いたのはその2週間後ぐらいの事である。インドと言ったら牛と人と車が街を走り回る混沌とした街を思い浮かべることが多い。デリーから列車で移動しこの町の降り立った時、インドを代表する観光地タージマハルは、のんびりした田舎町といった風情で、緊張感がとけホッとしたのを覚えている。

インドのゲストハウスは当時一泊100円が相場だった。タイが一泊500円でビックリしたがインドに入ってその安さに驚いた。今考えるとバックパッカーにとって物価の相場観を持つことはとても大切な事だと思う。

インドの街中では「リキシャー」と呼ばれる乗り物が大切な移動手段になっている。日本でいう人力車は文字通り人が引っ張るが、リキシャーは自転車が前についていてそれをこぐのである。親方が何台もリキシャーを保有していてそれをこぎ手に貸し出し、売り上げを吸い上げる仕組みで、日本のタクシー会社の様な組織になっている。こぎ手は子供から老人まで幅広い。乗る前に行先を告げ、値段を決める。メータはついていない。宿泊していたゲストハウスの人に大まかな運賃は教えて貰っていた。

その日に乗ったリキシャーはまだ小学生じゃないかと思えるような子供だった。坂道も小さな体から力を絞り出し必死に登って行く。運賃はあらかじめ教えて貰っていた金額と大差なかった。今でいう世界遺産「タージマハル」を見学した後、彼は客を逃がすまいと、門の前で私を待っていた。彼が一生懸命自転車をこぐ姿に感銘を受けていたので、帰りもそのまま乗ることにした。ゲストハウスまで真っ直ぐ帰ったとのか、どこか寄り道したのか、何であんなリクエストをしたのか、よく覚えていない。私は彼に「私にこがせて欲しい」と注文したのである。

当初彼は嫌がっていたが、しぶしぶ変わってくれた。乗った瞬間この操縦の難しさが分かった。ママチャリで子供を後ろに乗せ走った経験がある方は解ってもらえると思うが、後輪に重心が掛かり、前輪が浮き加減で、ハンドルが効かないのである。私はあれよあれよと道を外れ、道脇の畑に落ちて行った。彼はかんかんになって怒っている。修理代を親方に払わなければいけないらしい。インドルピーでいくらと言われたのかは覚えていないが、日本円で10000円ぐらいの事だった。修理代と言うが見たところ壊れたところはなさそうである。ペダルも動く。落ちた場所が畑で、柔かい場所だったのがよかったのだと思う。私がそういっても彼は引き下がらない。迷惑をかけているのは私である。リキシャーの整備代がいくらかかるか分からないが、日本だったら10000円ぐらいはかかるだろう。諦めその場で支払った。

ゲストハウスに帰りそのことを話すと、「10000円!!リキシャーが何十台も買えるよ」と大笑いされた。田代