季節感

朝、目覚めると夜中からしとしとと降り始めた雨は、この時季らしいやわらかな雨だった。 なごり惜しげに残っていた椿の花も、優しい霧のような春雨を浴びただけで散ってしまったようだ。 こんな雨が降るようになれば、身の竦むような寒さや、思い出したように戻ってくるきりりとした空気の冷たさとの別れもそう遠くない。 春が訪れる気配を自分のペースで見つけ、ワルツを踊るように余裕を持って味わいたいなら今のうちだと思う。 何しろ春が勢いづいてしまえば、圧倒されるような流れで、何もかもが一気に春色に染まってしまう。 繰り返しになるが、季節の機微をひとつ、ふたつと指折り数える様に、移ろいを味わいたいなら今がおすすめの時となる。 たとえばこの時季、公園などの土の上にそっと足を踏み入れてみる。 すると頑なに閉じていた冬の地面がいつのまにかしっとりほくほくと、やわらかくなっているのが靴を通して伝わってくる。 春本番を前に、華奢な植物の新芽がなんとかして土の壁を破り芽吹きやすくなるようにと、まるで土が心配りしているように思えてならない。 そう感じながら土曜日の早朝、天気も上々、玄関から踏み出した自分だった。

追記 ; 今、コロナウイルスを日本、及び世界中が流行を抑えるべく努力している多くの人達に感謝すると共に、感染して亡くなられた方々の御冥福をお祈りいたします。 世界で一日も早く収束することを願ってやみません。 又、感染して病と闘っている多くの方々の一日でも早く回復されますことをお祈りいたします。

JO