桃さんのしあわせ

中国、アン・ホイ監督の映画だ。 ストーリーは60年間、同じ家族に仕えてきた天涯孤独なメードの桃(タオ)さんが、脳卒中で倒れた。 映画プロヂューサーでもある雇主の息子は彼女の大切さに気ずき、介護に奔走する。 迷惑を掛けまいと老人ホームに入る桃さん。 老人介護をめぐる社会の厳しさを目の当たりにしながら、2人はやがて、真の親子以上の絆で結ばれていく物語だ。 2人の善良な人達をやさしく、人間的なまなざしで描いた映画で、2人の言いようもない愛情でみたされる。 ここには清涼な水が流れるような透明さがある。 主人公の日常はメードが食事を作り、彼は無言で食べる。 その後ろで彼女は立ったままで食事をする。 彼女が倒れた時、彼は介護人をつけようとするが、彼女は彼がお金をかけるのをいやがり、見舞いに来ずに仕事をしろという。 でも、ほんとうは彼が来るのを心から待っているのだ。 メード役のディニー・イップは、誠実さ、人間味、愛らしさを無理なく、見事に演じている。 この映画、人間の本質への希望を表しているのではないだろうか。 又、豪勢な料理よちも、愛情たっぷりのご飯を作ってもらうことが、どれだけ幸せか。 「料理というのは愛の印だ」とアン・ホイ監督は語っている。

JO