精霊流し

「精霊流し」という曲があります。さだまさしの優しい歌声と悲しげなバイオリンの音色。そして恋人を亡くした主人公の語りから、ひな祭りに行なわれる流しびなや灯篭流しのような、しんみりした雰囲気の行事を勝手に想像していました。

高校1年の夏休み。九州放浪の旅に出た、と前回書きました。北朝鮮の拉致事件と接近遭遇した時から数日後の事です。私は精霊流しを見るために長崎へ向かいました。

毎年8月15日に行われる精霊流しは、盆前に死去した人の遺族が故人の霊を弔うために手作りの舟を造り、舟を曳きながら街中を練り歩き,極楽浄土へ送り出すという長崎の伝統行事です。お祭りと勘違いする人も多いですが、故人を追悼する仏教行事です。

舟首には大きな故人の写真を飾り、その後ろには花や故人を忍ぶ品物であふれんばかり、そして何よりすごいのはロケット花火や爆竹を鳴らしながら舟を引くのです。日本の爆竹の消費量の半分以上をこの日1日長崎で使ってしまうとの事でした。横浜中華街の春節の時にも爆竹をかなりの量鳴らしますが、その比ではありません。どちらかというと何十台もの暴走族のオートバイがマルタの前を走り抜けた時に近いです。

「精霊流し」という曲から想像した「精霊流し」は実際の「精霊流し」とは全く違う、大変賑やかなものでした。このギャップの大きさが衝撃になって、40年たってもまだ忘れることのできないエピソードになっています。田代