季節は11月

ひんやり冷たい朝もや、胸のすくような夕暮れの色、可愛らしく転がる木の実に夜空にまたたく冬の星。 立冬から始まる月らしく、11月は季節の気配がそこかしこに現れる。 ところどころに小さな冬の息吹きを感じてみるが、実際に深まっていくのは冬ではなく秋になる。 もちろん雪国ではすでに冬支度で忙しいことだろう。 紅葉愛でる、という名目で行なう 「観楓会」 という美しい名のついた宴会も今の時期すでに終わっているところもあるだろう。 しかしここ神奈川ではこれからが紅葉の幕開け。 春の桜前線とは反対に北から降りてくる紅葉前線を迎えるところである。 その桜といえば、8月頃には早々と黄葉を終えて誰も知らぬうちに翌春に備えている。 他の紅葉はといえば、足元の草々から始まり、やがて樹々へと色は広がっていく。 その多様な紅葉の時季や姿を眺めていると、人間一人一人が異なる性質を持つように植物もそれぞれ性格があるように思えてならない。 北国や山地へと繰り出して観る壮大な紅葉はいうまでもないが一方で街並みを刻むように立つ街路樹の紅葉も魅力がある。 灰色のアスファルトに落ちた葉も少し目線を下げてみると色々と感じるものがある。 それにしても山吹色、蜜柑色、黄金色等とよく見ればたった一枚の葉のなかにも無数の色があることに気ずかされる。 色を指折り数えていくと色の持つぬくもりが、じんわりと心の中に蓄えられていき、あふれる頃に冬がやってくる。 そんな中で11月は過ぎていく。

JO