ユースホステル アテネ

 

以前エーゲ海の島に渡った時のことを書いた。その数日前の話である。

アムステルダムからアテネに着き、空港からバスで市内に入った。正確には覚えていないが夕方だったせいか、薄暗かったのを覚えている。

当時私は、アメリカからヨーロッパに渡ったのも、ギリシャに来たのも思い付きで、事前に下調べを全くしないでアテネに着いてしまっていた。一人で貧乏旅行をしていると、泊まったりご飯を食べたり、ここは行ってはいけない場所など、なんととなく匂いや気配を感じられるようになってくる。バスで市内に入り、なんとなく宿がありそうに感じ、人がたくさん歩いているところでバスを降りた。

旅行中アメリカではYMCAに泊まることが多かったが、ヨーロッパではユースホステルに泊まっていた。どちらも同じような作りで、2段ベッドだったりシングルのベッドがいくつか並んでいる相部屋で、シャワーやトイレは共同である。世界中のツーリストが利用していて、旅行の情報を仕入れるには格好の場所である。部屋は何の飾り気もなくそっけないものばかりだ。

バスを降り、街行く人に声をかけユースを知っている人を探した。そうしてたどり着いたのが写真のアテネユース(インターネットからダウンロード)である。

中に入ったところ薄暗く人もおらず、今まで泊まっていたYMCAやユースとは違った雰囲気だった。フロントにいた男性にベッドの空を聞いた所、最後の一つだと言われた。ギリシャに着いた最初の晩で日も暮れかけていたので最後の1枠ということに安堵した。

何階の何号室、風に案内されるだけなのだが、フロントの男性は部屋まで案内してくれた。ドアを開けた瞬間私はいやな「におい」を感じた。普通ユースの部屋は味もそっけもない部屋が多いのだが、そこは明らかにその男性が住んでいる自分の部屋と言う感じがした。

部屋に本棚や洋服ダンスがあり、私物らしいものが散乱していた。これはどう見てもその男性の「部屋」である。ベッドは一つしかない。ユースの中はこんなに薄暗いのにその部屋は蛍光灯が明るく照らされていた。

私がここにいてはいけないという気がした。部屋のチェンジを要求すると、ラスト、と言っていた割にあっけなく別の部屋に通された。そこは廊下と同じように薄暗く、2段ベッドが3っつあるだけのいかにもユースと言う部屋だった。誰もいなかった。あの部屋に泊まっていたら目くるめく夢の世界がだったのか、どろどろの地獄が待っていたのか。海外を一人で旅行していると「感じる」能力は確実に磨かれる。

翌日そのユースをでて別のゲストハウスに移動した。田代