ことばの再発見

「赤の他人」、何のかかわりもない他人のことをいうが、この「赤の他人」は、色の赤とはまったく違う無関係のものだ。 「アカ」とは仏前に供える水をいう閼伽(あか)で、水のように冷たいことから、縁、もゆかりもない他人の形容詞に用いられるようになった、と言う語源説もあるが、少々こじつけの感がある。 日本語には古くから「赤裸々(せきらら)」、「赤恥」のように「赤」が接頭語として、下にくることばを強調した「まったく」、「ハッキリした」とかいう意味を表す用法もある。 「赤の他人」もこれと同じ用法であろう。 そして、この強意を表す「赤」の出所は、つぎに掲げる漢語群に用いられた「赤(せき)」を訓読にしたところから生じたものと考えられる。 赤貧(ひどく貧乏)、赤裸、赤裸々(まるはだか、包隠さないようす)、赤心(せきしん、まじりけのない心)、赤心空虚(手に何も武器を持っていない事)。 また「真っ赤なウソ、真っ赤なニセモノ」などの「まっかな」も「赤の他人」をさらに強調したものであろう。 なお江戸時代の随筆「独寝(ひとりね)」のなかに「真実も真実、真っかな真実」という珍しい用例も見ることができる。 日本語には色々な歴史がある。

JO