渋沢 榮一

NHKの大河ドラマが始まった。 渋沢栄一と言えば「論語と算盤」であり、その基礎を作った「論語」は今でも日本では高い人気を誇る古典のひとつに他ならない。 ところが、この「論語」の内容といえば今から2千5百年も前に孔子が弟子たちに話した内容をもとに弟子たちが持ち寄って編集したもので、とにかく記述が簡略であり、文章の解釈の幅が大きいために、歴史の中で色々な解釈がされてきた。 そんな「論語」の教えを商業道徳として定着させようとしたのが渋沢栄一なのだ。 約600の社会事業にかかわり、そんな彼のモットーの一つが「論語と算盤」。 つまりビジネスには「論語」のようなモラルが必要だと説いたのだ。 そんな「論語」に孔子が言った事のひとつに「人間であるからには、だれでも富や地位のある生活を手にいれたいと思う。 だが、しかるべき役割を任された結果、手にいれたものでないなら、しがみつくべきではない。」と。 この一節は政治家や官僚に例えて読むと分かりやすい。 人々の税金からそれなりの給料をもらっているのだから、自分の利益ではなく公益を追うべきである。 しかしながら、現在も私利を追い、仲間の利益だけを図ってしまう政治家や、官僚が跡を絶たない。 だが商人や実業家は自分が稼がなければならないのだから富を求めて良いのだと言っている。 さらに「論語」では「女と使用人は始末におえない。目をかけるとつけ上がるし、突き放すと逆恨みする。」と言っているが、渋沢栄一は真っ向から否定している。 「いまは昔と異なり、人は皆平等で、男女も同じ権利を持っている。 職業には管理する側と、管理される側があるにせよ、人権に高い低いの区別はないのだ。 皆同じ人の子、ともに一蓮托生の同じ国民。 和気あいあいのうちに働いて、家業を盛んにし、家庭を管理する。 そしてすでに大正時代に、女性の参政権を認めるべきとも言っている。 このように渋沢栄一は「論語」と「算盤」という対照的な主張のバランスをとってこそ社会もビジネスも健全に発展するとしたのだ。

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